久しぶりのブログになりますが、今回はお仕事編です。
先日、参加をしてたMalaysia Venture Forum私が日々関わっているスタートアップエコシステムにおけるベンチャーキャピタル産業(以下VC)について、いくつかの持ち帰りポイントがありましたので、VC産業の主な課題3つとその解決策案を以下の通り纏めます。
課題
①政府資金への過度な依存度
マレーシアは長らく政府の資金に頼りすぎています。目安として、年間資金調達額の約65%がこれにあたります。この依存傾向は積極的に新興企業への投資するというリスクを避ける文化が出来上がってしまうことに繋がりかねません。より健全に資金調達ができ、シード・アーリーステージの起業家に資金提供を行えるよう、資金源を多様化させる時が来ています。(情報ソース:Security Commision Malaysia 2022)
②安全策にこだわることは必ずしも安全ではない
当地VCがシリーズA以降のスタートアップに出資する傾向と、シード・アーリーに対する嫌悪感からリスクを積極的に取れないことは皮肉なリアルです。それゆえ、シンガポール市場をはじめとしたリスクテイクの資金調達流動性が高い市場に潜在的なユニコーン(時価総額1,000億円以上)になりうるスタートアップ企業が流出してしまいます。これは結果的にマレーシア市場の新興産業創出というテーマにおいて競争力低下に繋がってしまいます。
③Exitが見出しづらい
マレーシアはVCにとって事業の出口に当たらず戦略性が見出しづらい市場です。これは資金の流動性が低いだけでなく、海外の投資家にとっても市場の魅力度に影響を与えています。この点はマレーシアでのEXITではなく、当地をどう活用することが望ましいかを含めたエコシステムとしてのブランディングの強化が必要不可欠です。
解決するには...
まずは、官民パートナーシップのモデル強化を益々進めていくこと。国営企業のペトロナスがFuture Techというスタートアップ向けのプログラムを実施したり通信キャリアのMaxisが同様のプログラムを運営しています。それらの資金提供は政府ファンドや民間VCが担うなど、という動きが出てきているので、こういった動きを加速していくことが不可欠。
各社/機関が自社の利益のみを考えるのでなく中期的にエコシステムを関係者で醸成させることのリターンと魅力的な投資対象フィールドであることを、国内外にPRしていくことも同時に必要でしょう。
次に、国外からの有識者の登用。マレーシアはVCのキャピタリストをはじめ新産業創出に経験のある人材が限られるので、シリコンバレーにて実績のある起業家や投資機関、エンジェル投資家等々のバックグラウンドを持つ方々を受け入れていくことが必要になります。またマレーシアの大学からのテクノロジーを実装できる人材創出が必要であり、この意味で他国のイノベーションハブ(シンガポールや中東、インドなど)とのさらなる連携が必要になるでしょう。
更には、海外企業に対する税制インセンティブ付与や免税・補助金を含めた優遇政策の実施が求められます。お隣シンガポールは国を上げた政策にて人・モノ・金・情報を集約し、次世代エネルギーや環境を考慮したテクノロジーや素材といった研究開発などに膨大な国家予算を注ぎ込んでいます。マレーシアにおいてもMDEC(デジタル庁相当の政府機関)やアクセラレーター機関等々が税制優遇や補助金が含まれるプログラムを運用していますが、シンガポールと比較すると見劣りすることは否めません。
上記の課題解決における官民連動の活動と外部人材活用、そして大学・研究機関といったアカデミアを含めた人材育成とインセンティブ提供の動きが強まることで、益々マレーシアVC産業の健全化が実現し中期的にスタートアップエコシステム自体が成熟していくことを期待しております。

