マレーシアの玄関、クアラルンプール国際空港に着くと、アナウンスがまずマレー語、そして英語という順番で聞こえてきます。
空港の係員や売店の女性が、髪の毛を隠す「ヒジャブ」を身に着けていて、イスラムの国に来たのだな、という実感が沸いてきます。
人種も宗教もさまざま
マレーシアには、主にマレー系と中華系とインド系の住民が居ます。この民族が大半を占めていて、あとは少数民族も多数。マレー系の人は基本的にイスラム教、中華系は仏教、インド系はヒンドゥー教で、話す言語も生活習慣も違いますがほとんどの人は英語は普通に話します。
海外からの移住者も多く、クアラルンプールでは元からのマレーシア人より、移住フィリピン人にベトナム人、インドネシア人そして日本人もコロナ前までは増え続けていました。最近の傾向としては中国本土からの中国人も増えています。実際に街を歩いてみると、本当にいろんな人種がいるので、違いがあって良いのだという気持ちになります。街中の看板も英語、マレー語、中国語や、日本語が書いてあるものも。そして、ユニクロや無印良品、ドンキホーテ、紀伊國屋書店など日本のチェーンも出店しています。
モスクもあるし、中華系の寺院もあるし、インド系の寺院もあります。イスラム教では1日に5回礼拝をすることになっていますが、その時間になるとスピーカーから「アザーン」というイスラム教のお祈りが流れてきます。
それが特に日常生活に干渉し合うことなく、みんな自然にそこにあるという感じで存在しています。
イスラム教では豚肉(エキスも含む)を食べる、酒を飲むのは禁忌とされていて、イスラムの教えに則った食材の使用や調理法を満たした規制にハラル認証というがあります。
イスラム教徒を顧客としない飲食店ではお酒も豚肉も提供します。
スーパーでは「ハラル」と「ノンハラル」のコーナーが分かれていて、どちらの人も買い物がしやすいようになっています。
私達はこう、あの人達はこうという具合にお互いの商習慣が存在し、尊重し合うのは当然というようです。


シンガポールも多民族国家、人種のるつぼと言われていますが、中華系が75%以上をしめるので、マレーシアほど多様性を感じることはなく、マレーシアの方が肌感文字通りのダイバーシティを実感できるのではないでしょうか。おそらく皆さんから少し縁遠いイスラム教のアザーンなどの日常がそう感じさるのかもしれません。
ただし、そんな綺麗事ばかりでもありません。ネットや報道などでイメージ的には3つの民族を中心に仲良く暮らしているのような取り上げ方がされますが、何か残虐の事件が起きると、あいつらインド系は短気だしな、とか中華系は金勘定のことしか考えてないしな、とかマレー系はえらそうにして差別的、とか個人レベルでは批判的に思っている側面もあるのが実情なのです。
実際に政治が絡むと、民族間で大きな暴動・喧嘩が起きる場合もあります。
私の解釈としては、多様性の融合というよりは住み分けているという感じがしています。もちろん尊重し合う面もありますが、我関せず焉ということで適度な距離感が保たれているように見てとれます。
外国人の私としてはどの民族がどうだとか、彼れはこうなんだよ、だからダメなんだよとローカルの知人に同意を求められる場面もありますが、それはそれとして、マレーシア生活の中で日々触れる多様性について、思慮を深めて行こうと思います。
是非みなさんも日本ではまず感じられることのないマレーシアの多様性のリアルを実感しに来てみませんか。

