先日、約3年ぶりにシンガポールに出張する機会を作りました。今回は新しいチャレンジとして金融事業に関わる前提で、現地での拠点化に向けた視察や関係者との面会を経た中で、事業を起こす視点においての「マレーシアとシンガポールのリアルな違い」を感じられたので、以下に整理してみます。
最終的にどうするかは「決め」の部分になるので、その視点で参考になれば幸いです。
経済成長と英語力
土地も資源もなかったシンガポールが独立後に急速な発展を遂げ、2022年では1人あたりのGDPで約10万ドル(約1,400万円)となりそうな勢いで経済成長が著しいです。起業家や投資家誘致の優遇政策も効果的に働き、優秀な人材も多く集まり、ASEANのみならず世界経済の中心都市の1つであることは間違いありません。先日は高度人材を更に世界中から集める意図が感じられる5年ビザについてもリリースがありました。
そのため、英語力も高度なレベルで求められます。当然、業務上の共通言語は基本「英語」です。更には、通りの名前も「Street」や「Blvd」で表記されたり※1(例:Cross street/ Raffles Blvd)、案内標識なども含め街全体が基本的には英語で統一されています。ローカルの飲食店やホーカー(屋台街)に行っても、シングリッシュと言われる訛りがありながらもスピード感ある英語が飛び交っており、英語を話せる人の多さや流暢さはマレーシアよりも上であると感じました。
※1 マレーシアでは通りの名前は「Jalan」(マレー語で通りを意味する)で表記されています。例:Jalan Kiara/Jalan Ampang
中国語(北京語)の必要性を語る前に、業務に差し支えない英語力をまず備えておくというのが先決と言って良いでしょう。

信頼性の意味合い
スタートアップのように一般的にベンチャーキャピタル(VC)や投資家、更には事業会社からの資金をテコにしてレバレッジを効かせて大きく事業を成長させていくケースは、シンガポールに本社登記をすることが適しています。
特に外貨(例えばUSドル)での取引を海外と行う場合においては、マレーシアの金融機関ですと送金の限度額が設けられ手続きの為に毎回銀行に出向いて必要書類にサインをしないといけないケースなども出てきます。言い換えれば自社の資金が出しにくい、動かしにくいことが考えられるのです。
その点、シンガポールではこのようなハードルがなく、更にはシンガポールに登記されていることでの信頼性が投資家からも理解されやすく、資金調達がしやすい(事業内容にもよります)という点があります。
物価高をどう捉えるか
とはいえシンガポールの物価は高いです。オフィスの賃貸料をはじめ事業運営に関わる諸々の費用は高くなります。もちろん人件費も同様で優秀な人材を獲得しようと思えば、マレーシアの人件費と比較しても、プラスαの資金を考えておく必要があります。さらには、昨今の円安傾向の影響もしっかりと頭に入れておく必要があります。
したがって、シンガポールはプロフィットセンターにして税制や補助金などの優遇政策を外国企業としても上手く活用しながらの拠点として運営し、オペレーションや開発の拠点をマレーシアに構え且つそこをコストセンターにする、というのが費用対効果を考えた事業運営として考えられるのも一つだと思います。
将来的には日本人が拠点運営を行うのでなく、ローカル人材に任せるという方針がシンガポールには適すると言えそうです。
最後に
今回はスタートアップ事業を例に纏めてみましたが、マレーシアにはテック(デジタル技術)を活用する起業家向けのMTEP(Malaysia Technology Entrepreneur Program)というVISAが取得できる制度も用意されています。日本の起業家でMTEPを活用して事業をスタートさせている方もおります。
まずは小さく事業を始め素早く立ち上げていきたい、と考える方にはマレーシアは適しています。是非ご参考にください。

