首都機能を実感できるエリアを拠点に!

2021年12月の中旬から下旬にかけて、モンスーンの時期における長雨が続き、100年に1度と言われる程の大規模な洪水が発生しました。
今回は死者も発生してしまい、また床上浸水の影響で当地の製造業など経済的にも打撃を受けました。
このような天災の教訓から、クアラルンプールを拠点化とする際に考えておくべきリスクとポイントを整理します。

都市の機能を理解する

皆さんは、海外を拠点にする場合に何を優先的に考えるでしょうか。食事、医療、交通、治安などと部分的に要素を選択することも良いですが、
クアラルンプール(都市)の機能を抑え、活用できる場所を選択することがお勧めだと考えます。
別の言い方をすれば、生活に必要な要素が近郊(車で10-15分程度)で収められるメリットが享受できうるエリア、ということです。

例えば...
・緊急で国立病院(大きな)の急患に行く必要ができてしまった...
・ビザの手続き等で直近で対応が必要になり大使館に行かなければならなくなった...
・急遽明日から断水が始まるので、3日分の生活に必要なお水を大型スーパーで購入する必要がある...

このようなケースが実際のクアラルンプール生活では起こりえることです。

そんな時、郊外に住んでいたらどうでしょうか。公共交通機関と距離のある場所が拠点の場合は電車でなく車を使用することが必要ですが、都市の中心に向かおうとすると
時間によっては煩わしい渋滞に巻き込まれたり、先日のような大雨が続く場合は道路が遮断される、Grabの様な配車サービスが捕まりにくいなど、といったリスクが伴います。

洪水対策が施されている

実は、クアラルンプール中心街では雨水管理およびトンネルを雨水の排水用とした道路構造を設けて、洪水の対策がなされています。
毎年昨年末のような大規模までにはならないものの、過去から洪水の被害が発生していることを受け、2007年からマレーシアの
主要な国家プロジェクト「SMART」の名称で排水機能が運用されています。

全長9.7 kmのトンネルは、東南アジアで最長の雨水排水を目的としたトンネルであり、アジアで2番目に長いトンネルです。
実際に先月の大雨においても、クアラルンプールの中心街が洪水にならないよう、一定の効果を発揮したこともローカルニュースで取り上げられていました。
さらに、洪水の影響が出た地域は、クアラルンプールから車で30分以上離れた一部工業地帯や湾岸エリアが最も酷かったことが同時に報道されていたのです。

日常では気づきにくいが、KL内のトンネルには排水を目的とした機能があり、災害対策が施されている

中心地にて街の変化を捉える

緊急時以外の日常においても、クアラルンプールの中心地に居ることで、自分の車を持たなくとも移動手段の選択肢(電車・バス・Grabなどのライドシェア)を適切に使い分けることができます。
また、クアラルンプール内の移動であれば、どこに行くにもおおよそ10km圏内で収まるという利点もあります。
この街は、常にどこかしらで新しい道路の建設工事がされているので、google mapでは通行できるところが、当日になってみると大幅な迂回が必要な箇所に直面することもしばしば。
そんな時も、街の中心地を起点にしていれば、時間のロスが発生すること自体も少なく生活することができます。

日系に限らず、外資系を含めた新しい商業複合施設の建設も、基本的には街の中心地付近に1号店が開設されます。その後、クアラルンプールの郊外、
そしてクアラルンプールの外(東京であれば23区外)に類似施設が建設されていきます。このような施設の中には、日本食や日本製品が購入できる店舗が入ることも多く、また最近では大手の金融機関も本社を同様の施設に移すこともあります。

災害対策、医療、VISAや金融関係における対応、そして普段の生活の中で直面しうる想定外に柔軟に対応していくための選択肢を確保する、また、最新の街の様子を
押さえるという観点では、拠点化にあたっては中心地(都市部)を軸に考えてみては如何でしょうか。

世界で第2位の高さを誇るPNB118タ(真ん中)も2022年には完成予定で、新たな名所として街の景色に溶け込んでいる

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鈴木健吾

Kengo SUZUKI

NEOLIZE SEA SDN.BHD.代表。 人生の選択肢として第2の拠点をマレーシアに設立し自ら実践中。 当地のデジタルエコシステム形成に関わる民間企業、スタートアップ、投資会社、政府機関等に幅広いネットワークを持つ。拠点立上げ・組織/体制作りと運用・テック系新規事業の事業化に精通する。東南アジアをカバーする当地のVC(Venture Capital)アドバイザーも務める。クアラルンプール在住。

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