ますます魅力的に!?KL20にて発表されたマレーシア新ビザ "イノベーションパス" とは

先月、クアラルンプールにてKL20というイベントが開催されました。このイベントは2030年に向けたマレーシアの新興産業創出のコミットメントを示す機会で、その中で

「イノベーション・パス」

が、発表されました。


今回の新ビザ発表に伴う施策は、海外からのテック系起業家や投資家といった海外人材にとって、

「マレーシアが如何にビジネス拠点として魅力的な環境を整えていけるか」

未来的展望をアピールする意味合いもあるように見てとれます。

以下に

・その概要

・新しい施策を打ち出した現在の課題と今後の展望を

纏めてみました。

新しいビザ「イノベーションパス」制度の概要

テック系企業やVC向けの新ビザパッケージは、以下の4つのカテゴリーから形成されています。

  • 創業者/起業家
  • 経営幹部
  • 高度人材
  • 一般人材


それぞれの定義としては...

  • 経営幹部とは...いわゆるCXOや部門の統括責任者レベル
  • 高度人材とは...経験豊富で希少なスキルセットを持つ人材
  • 一般人材とは...テック系企業もしくはベンチャーキャピタルにて日常業務に従事する人材

とのこと。


就労可能期間は...

  • 一般人材は2年
  • その他3つのカテゴリー人材は5年

創業者・起業家と経営幹部は配偶者も就労可能なビザは提供されるとのことで、帯同家族の支援及び移住計画促進への働きかけも伺えます。

NNAさんの記事が非常にわかりやすかったので、こちらにシェアさせて頂きますね。


マレーシアの恒久的な課題とは

一言で言えば、スタートアップを起こす人材の欠如です。

マレーシアにも相当数の創業者・起業家はおりますが、他社資本を大きく入れて事業を拡大させていくスタートアップのモデルで事業を起こす人材は、希少であります。

言い方を変えれば中小企業(SMEs)として小売やレストラン等のサービス業を展開する起業家(親が家業をやっているのを引き継ぐケースもあり)は一定数いるものの、スタートアップ起業家は少ないのです。
また現時点で、起業家人材をはじめ経営幹部や高度人材相当の頭脳がマレーシア国外に流出しています。マレーシア国外に目を向けていると言った方がいいでしょうか。そうなると、やはりマレーシア国内における人材能力の底上げになりませんよね。

また、アーリーステージ・シードステージにおけるマレーシア国内の資金調達額は目立ったものがない現状であります。
一方で資金については政府の後押しもありそれなりに健全な状況であるのですが、有望な人材が乏しいことから資金提供との需給バランンスが不釣り合いになっているリアルがあります。
個人的には、今回の発表はこれらの課題にアプローチする施策であると感じてます。


今後の見通し

海外からの起業家・投資家・経営人材を呼び込むための、今回の施策。目的としては

・マレーシアローカル人材の能力開発

・より多くのスタートアップ企業の誕生や醸成に貢献

をさらに生み出すことであります。マレーシア全体のビジネスレベルの底上げにつながれば、国力は発展的な立ち位置を築くことができると言えるでしょう。その結果、海外起業家及び人材にとっても有益なビジネス拠点となりうるわけです。まさに相乗効果ですね。
特に、資金調達と人材確保が事業開発の鍵となるスタートアップにとっても、この施策の影響を定期的に見ていく必要がありそうです。

また、最近のトレンドとしてシンガポールにおけるコスト高(人材・オフィス・事業オペレーション費用全般)から、ASEANの事業拠点をマレーシア等に移す という事例も出てきており、この流れは一般企業においては今後5年間である程度色濃くなってくると考えられています。
定期的にウォッチ必須な状況ですので今後も進捗を発信していきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2030年に向けマレーシアのスタートアップエコシステムはどう変化していくか


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鈴木健吾

Kengo SUZUKI

NEOLIZE SEA SDN.BHD.代表。 人生の選択肢として第2の拠点をマレーシアに設立し自ら実践中。 当地のデジタルエコシステム形成に関わる民間企業、スタートアップ、投資会社、政府機関等に幅広いネットワークを持つ。拠点立上げ・組織/体制作りと運用・テック系新規事業の事業化に精通する。東南アジアをカバーする当地のVC(Venture Capital)アドバイザーも務める。クアラルンプール在住。

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